ショートボディグッピーの探求①表現型と今後の展望
このシリーズではグッピーのショートボディ表現について追及すると共に、表現確立を最終目標に作出記録を残していこうと思います。
記録を残していく前に、ショートボディの仕組みや現在の状況について理解を得る必要がある為、今回はその前振りとなります。
ショートボディ表現について
アクアリウムでは主にショートボディと呼ばれるこの表現ですが、独特の寸詰まりしたボディはこの脊椎異常によって成り立っています。
市場では表現の1つとして普及していますが、これは奇形の一種であり一部拒否反応を起こす方もいるのが事実です。
グッピーのショースタンダードにおいて、寸詰まり個体は評価に値しない魚だと思います。しかしながら、若干寸詰まった程度の個体が大半であり、ショートボディと呼べる個体自体がほぼ見受けられないように思います。
現在では極一部の品種でショートボディ品種が生産されており、輸入された系統が日本でも少数流通しています。
ショートボディの原理
魚類の背骨は複数の小さな骨が連結しており、独立した1つ1つは椎骨と呼ばれています。
椎骨数は同種で近似値を示しますが、異常に少ない場合にショートボディが表現されます。
椎骨数は水温に影響を受ける事例が多数確認されており、アクアリウムで親しまれる一部魚種でも高水温下での生産方法が用いられています。
アクアリウム界のショートボディ品種
グッピーにおいてショートボディ表現の普及は、まだなされていませんが、アクアリウムでの流通量がある魚種は多数います。
次はそれらの説明を交えつつ、確認していこうと思います。
バルーンモーリー
セルフィンモーリーを起源とする改良品種のバルーンモーリーはショートボディ表現の中で一番ポピュラーと呼べると思います。
バルーンモーリーの体型は遺伝形質であり、グッピーと同じ卵胎生であることからも実現可能であることが伺えます。
ルーツは奇形(寸詰まり)を固定したものとされ、ファームでの大量生産による偶然の産物であると考えられます。
バルーンラミレジィ
ドワーフシクリッドであるラミレジィもショートボディが多く流通しています。
こちらは卵生ですが、繁殖形態には依存しない事が言えると思います。
他にもグラミーやプラティなど様々な熱帯魚にショート(バルーン)表現は存在しています。
ダルマメダカ
空前の大ブームを起こしているメダカですが、ダルマと呼ばれる表現もショートボディと同義です。
メダカにおいては複数の対立遺伝子が存在する遺伝形質であることが知られ、水温が大きなトリガーになることはあまりにも有名です。
他の魚種とは違い、遺伝子が解明されているという点が大きなヒントになり得るかもしれません。
またこれらの先駆けとして金魚にもショートボディが存在します。
古代魚
アロワナやポリプテルスを始め、古代魚のショートボディ市場は盛んです。
ショートボディという呼称自体は古代魚が一番なじみ深く思います。
寸詰まりの程度により、スーパーショートやウルトラショートとランク付けされることもあり、一種のグレード分けもなされています。
グッピーのショートボディ品種
冒頭でも触れたようにグッピーでも既にショートボディ品種自体は存在します。
それがこちら、日本でいう所の丹頂レッドテールタキシードです。(画像は仲の良い海外のファーム産から許可を取りお借りしました)
海外では「Koi tuxedo」など呼ばれますが、この品種のみ安定生産され国内でも見かけることが出来ます。通常体色のみに留まらず、海外ではRREAやゴールデンにリボンと多岐に渡っていました。
探した限りでは、レッドドラゴンのショートボディが系統レベルで固定されていましたが、流通はまだありません。他の品種は単発物で固定はされていないようでした。
グッピーでのショートボディの遺伝(予想)
ショートボディは遺伝形質の奇形であり、実際丹頂レッドテールタキシードのショートボディが存在する以上、グッピーでも作出自体は可能であると思います。
高水温での脊椎異常を紹介しましたが、適水温の幅が広いグッピーでは脊椎異常のトリガーになりえないのではないかと思います。
現に東南アジアの最高気温は35度付近であるものの、輸入グッピーに目立った寸詰まりは見られません。
また既存品種でも寸詰まりしやすい系統、品種というのは存在しており、そのような品種の方が可能性は高いと思います。寸詰まりの傾向があるのは主にタイのファームで生産されているような品種です。
ショートボディの問題点
ショートボディはただでさえ極稀にしか出現しないのに加え、以下の問題点をクリアする必要があります。
作出面での問題点
ショートボディの作出面での問題点は、偶然の産物に頼るしかないという点につきます。
累代の浅い健康な系統でショートボディがでる可能性はほぼ0%であり、累代を重ねた系統では別の面で問題が起こりやすい点がよりいっそう作出を難しくしていると思います。作出というよりも今の所は完全な神頼みです。
健康面での問題点
最大の問題点がショートボディ個体の虚弱性だと思います。
今後の記事で散々失敗を書いていきますが、内臓が圧迫されているせいかほぼ確実に健康面に大きな問題を抱えて産まれてきます。
他にも矮小個体や繁殖能力の欠如があり、今のところは後に続けることが出来ていません。
表現面での問題点
バルーンと呼ばれるように体型が乱れやすい点もマイナス要素です。
詰まっている為、頭部の極端な凹みや背骨の変形が起こりやすく、尾筒だけが短いという都合の良い表現は中々得ることが出来ません。
今後の展望
ここからは完全に私の意見になります。
現状ではショートボディが流行ったり、新しく作出される可能性というのは限りなく低いのだと思います。丹頂レッドテールタキシードの画像をお借りするときに他のショートボディ品種はないのか尋ねてみましたが、顧客は普通のボディを求めていると一蹴されてしまいました。
丹頂グッピー自体、特別人気があるわけではないのでこの品種がベースでは正直厳しいのではないかと思います。
もし可能性があるとしたら人気品種でショートボディを作出する事ですが、取り組む人もいません。
私もショースタンダードに則ってブリードをしているので強い拘りがあるわけではありませんが、年に1回くらいは目にするので機会がある度にチャレンジして記録に残せたらと思います。
馬鹿な事やってるなと思われる方も多いと思いますが、今後の展開にご期待くださいませ。