グッピーの繁殖まとめ
今回はグッピーを繁殖させる方法やポイントを紹介していきます。
グッピーは繁殖が容易な魚ですので、当記事を参考に成功していただけたら幸いです。
(注:ビギナーを対象にしたコンテンツですので、分かりやすくする為に一部不適な表現や単語を使っています。)
グッピーの繁殖方法
まず初めにグッピーの繁殖方法についてざっくり説明します。
グッピーは産卵というものをしません。
ではどのように繁殖するのかというと、子供を直接出産します。これは卵胎生という繁殖形態です。
文字通り「卵を胎内で孵化させて出産する」という意味での卵胎生ですね。
多くの魚類は産卵をして繁殖を行いますが、この違いがグッピーの繁殖を容易にしているといっても過言ではありません。
メジャーなものだとプラティーやソードテール、モーリーも卵胎生の仲間になります。
魚類だけではなく、マムシやタニシ等の爬虫類や貝類にも卵胎生は存在します。
卵で孵化する卵生、母体に栄養を供給して育つ胎生。その間に位置するのが卵胎生と言って良いでしょう。
胎生と違い、母体からは栄養供給を受けないので注意してください。
グッピーの交尾方法
卵生の魚はメスの産卵時にオスが精子を振りかけて受精を行うのが一般的です。
対して卵胎生のグッピーはどのようにして交尾を行うのか説明します。
グッピーのオスは尻ビレが棒状に変化しておりゴノポディウム(以下ゴノポ)という生殖器になっています。(画像参照)
このゴノポをメスの排泄肛に押し当て精子を注入することで交尾が成り立ちます。
(リボンやスワロー等はゴノポが長く伸びてしまっているために交配を行うことができませんので注意しましょう。)
水槽内でオスとメスを混泳させると、オスが体を震わせながらヒレを広げる求愛ダンスや、ゴノポを突き立てながらメスを追いかける様子が見れるかと思います。
自然界ではオスはメスを引き止め交尾を成功させなければいけませんが、水槽内では狭いので半強制的に交尾している場合が殆どだと思います。
メスはオスの精子を貯蔵しておくことができるため、交配後も2~3回ほどは出産が可能です。
特に交配済みのメスを別のオスとペアリングさせる場合は注意が必要です。
産まれてくる稚魚は以前交配に使ったオスの精子で受精した稚魚、新しくペアリングさせたオスの精子で受精した稚魚の2パターンを産むことがあるからです。
狙ったペア(種親)から子供を得るために、我々ブリーダーは早い段階から雄雌を分けることがあります。交尾してしまう前に分けてしまうことで、処女のメスを得ることができるというわけです。
この場合、ゴノポが形成される前(生後約1ヶ月)にオスメスを分ければ処女雌を得ることができます。
一度交配が成功してしまうと2〜3回は精子が残る可能性がつきまとうので、シビアな交配が求められる場合は是非試してみてください。
確実に子供を得るために
1対1の交配をしない場合、確実に稚魚を得る為にオスを多めにすることをオススメします。
メスが少ないとストレスがかかると言われたりしますが、よっぽどの比率や過密でない場合心配ありません。
ましてや老齢のグッピー(7か月以降)になるとオスの活力が低下して交尾が難しくなるため、ある程度のオスが必要不可欠になります。
画像のようなアルビノ種(RRE.Aやルチノー)は視力が弱く交尾が成功しにくい為、複数匹のオスを用いることをオススメします。
またリボンやスワローといったロングフィンの品種も交配が難しいです。
どうしても交尾が成功しない場合、若いオス複数匹を親として使うと成功しやすいです。
繁殖で産まれる数
グッピーの繁殖で一度に生まれる数は、若い個体の初産だと10数匹です。
成魚で30〜70匹、大きいメスになると70〜100匹程出産します。
画像は7か月の雌から1度の繁殖で産まれた子供達です。画像では約100匹の子供を得ることができました。
我が家での最大出産数は160匹ですが、5、6ヶ月程度の個体による出産だと50〜70匹の出産であることが多いです。
繁殖数を増やす方法
グッピーの産卵数を増やす手段を紹介します。
手間をかける程、産卵数も増えるので皆さんも是非挑戦してみてください。
1.メスのサイズ
産卵数は雌のサイズに比例しますので大きくすることが一番重要です。
赤虫やイトメを始めとするハイカロリー飼料は増体効果が高く、成長期の雌に積極的にあげることをオススメします。
人工飼料の場合、タンパク質と脂質が高いものをあげましょう。
2.産卵数
雌のサイズを大きくするのと似て非なるのが、この産卵数です。
母体と違い、卵は産卵の度に放出されてしまいます。
つまり、雌が大きくなったからと餌の量を少なくすると産卵数が低下し、結果繁殖数も少なくなるというわけです。
噛み砕くと、毎日しっかり餌をあげましょうということです。
3.繁殖の経験数
先述の通り、初産の雌は産卵数が少ないです。
ですが若い時から交配を繰り返し、経験を積んだメスは産卵数が増加する傾向にあります。
処女雌を確保するのも大事ですが、多く産ませたい場合は若いうちから出産を経験させるのもまた一つです。
ネット上ではあまり触れられていませんが、処女の雌は交配が成立しにくい傾向があります。
グッピーの成熟月齢は?
通常、グッピーのオスは1ヶ月過ぎから尻ビレがゴノポへと変化し始め、生殖器が形成されます。
対してメスは2か月過ぎから卵が形成され、3か月程で出産が可能になります。
つまり、ショップで販売されているサイズであれば、まず間違いなく性成熟しているので繁殖可能です!
ショップでオスメス一緒に販売されている場合は交配済みなことが多いため(ほぼ100%)、購入後にオスメスを分けても繁殖してしまう可能性が高いです。
しかし、購入時はなるべく早く繁殖させたいと考えている人が殆どではないでしょうか?
ショップ等でグッピーを購入の際は、お腹がしっかりと膨らんだグッピーを買うことでスムーズに繁殖を行うことができます。
グッピーを購入する際のコツ
ここまでグッピーの繁殖や交配について説明してきました。
次は実践として、グッピーを購入する際のポイントを説明します。
グッピーをスムーズに繁殖させるためには、やはり良い個体をしっかりと選んで買うのが大事です。
通販等では現物を見て購入することができませんが、殆どのショップでは買う個体を指定できると思いますので参考にしてみて下さい。
グッピーの出産周期
一般的にグッピーの出産周期は20~30日と言われています。
これは水温に依存しているところがあり、高いほど早くなる傾向があります。
よく言われるのが23~25日と言われますが、私の経験からも間違いないと思います。
また、20度付近で飼育した場合は約40日周期になりました。
グッピーの稚魚を得る上で一番大事なのは妊娠・出産させられるかよりも、出産時期を見分け、稚魚を掬い出せるかという点にあります。
何故かと言いますと、グッピーの親は自分で産んだ稚魚を食べてしまうのです。
メス親は躊躇する傾向にありますが、オスや関係ない雌は見つけ次第追い回し食べてしまうので注意が必要です。
出産の見分け方
グッピーの出産の見分け方としてよく挙げられるのがお腹が角ばってきたらという表現です。間違ってはいないのですが、初めて繁殖させる方にはいまいちピンとこないとおもいます。
また、あまりにもお腹がパンパンだと腹水病の可能性もあります。
おかしいな?と思ったら糞がしっかり出ているか確認してみてください。
ここまで顕著な個体はあまり見ませんが、画像は腹水病のメスです。
こちらが出産間近なメスです。
お腹があまり膨らまない系統や品種などもいるので注意が必要です。
特に初産の個体は稚魚が少ない為、あまりお腹が膨らまない傾向にあります。
また、以下のポイントを参考にして下さい。
1.ガラス面に鼻をつけて上下にせわしなく泳ぐ。
2.物陰に隠れる。
3.他のグッピーを追い払う。
4.上から見たときにお腹が張り出している。
5.ヒレを閉じたり気張るような仕草をする。
確実な見分け方
確実に稚魚を得る為には前回の出産から20日ほどで隔離してしまうことが確実です。
出産が近いことを見分けるには消灯時など色抜けしている時にライトを点けてメスの腹部を確認するのが分かりやすくオススメです。。
出産が近いと稚魚で黒く、まだの場合は卵が見えます。
色抜けしていない場合だとメス自体のメラニン色素で黒く見えてしまうことがある為、注意して下さい。
このように稚魚の目が見えることもあります。
画像の雌は、お腹はそこまで膨らんでいないもの出産が近いことが分かりますね。
グッピーの出産が近いと分かったら?
グッピーの出産が近いと分かったら、いよいよ隔離の時期になります。
ブリーダーのように水槽をいくつも置けない場合は自然出産に任せるという方法もあります。
定番ですがウィローモスやウォータースプライトは稚魚の隠れ家として最適です。
かくいう私も最初は使っていましたが、枠ありの水槽を縦に並べるスタイルではどうしても邪魔になってしまうので現在は使っていません。
水槽を横置きするのであれば、使い勝手も良いのでオススメです。
わざと水槽内で産ませる
ブリーダーの方でも自然出産させた後に水槽から稚魚を採る人もいます。
親魚から隠れ、生きのびた稚魚は強い形質を持つという考え方のようです。
確かに弱体化している個体はベリースライダー等で上手く泳げないことも多い為、自然に排除できると考えられます。
自然出産の場合は画像のように水草を茂らせてください。
基本的に私は自作の産仔ケースを使い確実に仔を取っています。画像のように、出産数が少ない品種から稚魚を得る場合は隔離必須です。
隔離の期間について
一般的に、隔離の期間はなるべく短い方が良いと言われます。
確かにその通りではあるのですが、それは理想論です。
実際の所、健康なグッピーであれば隔離して1週間を超えても全く問題ありません。
餌の食いなどは落ちますが、そもそも隔離中に餌をあげる必要はありませんし、死にません。
グッピーは人間のように、1週間程度で餓死する程弱くはないので、あくまで水質を保つことが最優先です。
グッピーは健康な個体であれば1ヶ月ほどの絶食にも耐えれる魚です。
出産しないからと何回も隔離したり水槽に戻したりする方がよっぽとストレスになるというものです。
先述の通り、私はお腹に稚魚の形成が確認できた時点で隔離してしまいます。
わざわざ出産直前をピッタリ狙う必要などありません。
繁殖したら?
出産が確認出来たら、稚魚の採り逃しを防ぐために暫くは産仔ケースに入れたままにしておきます。明らかにお腹が凹んでいる場合は速やかに水槽内に戻してあげましょう。
ただし、個体によっては1日かけて産む個体や数匹産んだ後、時間を置いて再び産仔する個体もいるので注意してください。
出産後、グッピーのメスは卵を3割ほど残します。
出産後はメスのお腹は少し凹んでしまいますが、あまりにベッコリとヘコんでしまっている場合2つのパターンがあります。
1.卵を全て放出してしまったor次の卵が形成できなかった。
前者の場合は再び卵が形成されお腹がふっくらとしてきますが、後者の場合はベッコリとヘコんだままです。
イトミミズなど栄養価の高い餌をふんだんに与えることで改善する場合もありますが時間がかかります。
こうなってしまったら、わざわざ稚魚を採る必要はないと思っています。
2.老齢
老いたメスが出産後に繁殖能力が失われてしまうパターンです。
この場合、復活はほぼ不可能ですので親魚としての使命は終わります。
ゆっくりと老後を過ごさせてあげてください。
また老齢のメスは死産や未成熟、未孵化の稚魚を放出する確率が高いです。
正常だった稚魚への影響は分かりませんが、普通に考えるとあまり良くないのは確かですね。
残念ながら出産の直前になって死んでしまうメスもいますし、出産しながら死んでしまうメスもいます。
繁殖後は?
出産の終わりが確認できたら親魚は水槽に戻します。
消耗した体力の回復と新たな卵の形成の為、栄養価の高い餌をふんだんに与えてください。
ブラインシュリンプやイトメ、赤虫がオススメです。
産仔ケースで出産させた場合は稚魚をそのままケース内で飼育することが可能です。
ただし、限られた水量では水の汚れにはくれぐれも注意を。
食べ残しが発生しやすい時期なので、小まめにスポイトで取り除くようにします。
下記のスポイトがオススメです。
水槽内で産まれた稚魚の回収にも使えます。
私はノーマルとロングバージョン2本持っています。
プラケースなどに産ませた場合は、まず水を換えてください。
稀に腹水を多く放出する個体がおり水が急激に汚れていることがあります。
生臭い匂いがしたら要注意です。
水換え後は少し塩を投入することをオススメします。0.2〜0.3%の少し薄めが良いです。
針病の予防に塩を入れる…というのもありますが、ブラインシュリンプが長生きします。
最低でも1日2〜3回は餌を与えて欲しいのですが、ブラインシュリンプを数時間泳がせることで飽和的に給餌することができます。
人工飼料でも育てることは可能ですが、個人的にブラインシュリンプは使って欲しいですね。
稚魚時の給餌でその後が決まると言っても過言ではありません。
沢山食べて育った個体とは後々体躯やサイズに差が出ます。
粉餌を使う場合は食べ残しで水が汚れやすいので注意が必要です。
2、3日に一度は水換えを心掛けて下さい。
あえて水換えをしないことで、虚弱な個体を落としたり、病気への耐性を作る…
という方法もありますが、餌食いが悪くなりますし、初心者がわざわざ実践する必要性はないと思っています。
また、止水飼育のタンクメイトとしてラムズホーンを入れることで水の持ちが格段に良くなります。非常にオススメです。
水槽デビュー!
生後10日ほど経つと遊泳性も高まり、水槽に入れることができます。
私はプラケースで1ヶ月飼育することも珍しくありませんが、水換え地獄ですし成長速度も水槽に入れた方が段違いで早いです。
親魚と同じ水槽に入れる方は、齧られないか様子を見て合流させましょう。
飼育に関しては別の記事で書こうと思います。
まとめ
グッピーは繁殖が簡単な一方、飼育キャパを考えずに繁殖する方が多く見受けられます。
里親や安価での販売が頻繁に行われている魚種ですが、自分に管理できる数の飼育を心掛けましょう。
この記事が少しでもグッピー初心者さんの参考になれば幸いです。