今日はタイトル通りグッピーのブリードに適した水温を考察していきます。
”ブリード”と表現した通り、今回は鑑賞を楽しむアクアリウムとしてではなく、ブリーダー側の視点で書いていきます。。
低水温、高水温共に良かれと思って飼育していた時期があるので、過去の考えや今の考えを比較し、ブリードしてみて実際どうだったのかを纏めます。
そもそもグッピーを飼育できる限界水温は?
各水温について書く前にグッピーが生存できる水温と飼育できる水温について理解しておく必要があります。
一般論ではグッピーの飼育水温は23~28度程度と表現されることが多いですが、グッピーを飼育できる水温にはもう少し余裕がありますので先に定義づけをしておきます。
尚、本記事では24~26度を中水温とします。
高水温の限界
私のブリードルームではエアコンを使用しておりますので、あまりにも高室温にしてしまうと私が限界になってしまいます。
よって極端な高水温下にグッピーを置いたことはありません。
ですが、夏のイベント時ではグッピーの袋が30度を超えてしまい安否を心配するレベルでしたが、鼻上げをしていただけで死んでしまうことはありませんでした。
一般的な飼育者さんの環境ですと真夏は30度を超えてしまうこともあるでしょうし、一時的に上回るようであれば大きな問題はないでしょう。
しかし、30度を超えるようですと水の持ちが非常に悪いことやエアコンでの一括管理が多いブリーダーでは非現実的なため高水温の定義は27~30度とします。
低水温の限界
私の飼育経験からするとギリギリ飼育出来る低水温は18~20度。生存させておくだけならもう1~2度低くても無理ということはないように思います。
ただし20度をきってくると餌の消化やグッピーの活性に問題が出てきますので、本記事では”低水温”の定義は20~23度とします。
少し脱線しますが、冬場に床上に置いたままのプラケースなんかは20度を余裕で下回っていることでしょうし、発送されたグッピーの袋は冷えています。
つまり水温の変化がゆっくりかつ一時的であれば、15度近くになっても即死ということはないでしょう。
勿論、短期間に限るものですし、わざわざ実行する必要性はありません。
高水温のメリット・デメリット
やはり高水温のメリットは成長が早いことです。
ということは餌食いが盛んになり、人間的に言えば良く食べ運動する様な状態になりますので結果的に魚が早く大きくなるということなんでしょう。
それ故、私も高水温飼育の信者となっている時期がありました。
デメリットとしては水持ちが悪くなることや酸欠等が挙げられます。しかし我々ブリーダーは餌をバカバカやりバンバン水替えするのが常識のようなもの。
一見すると大したデメリットにはなり得ず、高水温万歳な気がしてしまうわけです。
そんな高水温飼育ですが試すうちに最大のウィークポイントが見つかってしまいました。 とにかくグッピーが潰れるのが早い,つまり短命だったりするわけです。
推測ですが、代謝の下がってきた成魚や老魚にとって高水温や大量給餌は負荷がかかってしまうからではないかと思います。
以上のことから、高温飼育は代謝の激しい若魚までに向いた飼育方法で、”生涯通じての高水温”飼育に需要はないのではないかと思います。
低水温のメリット・デメリット
低水温のメリットはとにかく魚が長持ちすること。
明らかに長寿となり、尾びれの持ちも変わってくると私は思っています。
デメリットは餌食いの低下や成長速度が遅いことです。
つまり、代謝の激しい稚~若魚には向いていないのではないかと思います。
また、繁殖頻度も低下しますので代を重ねたい人にとっても向いていないかと思います。
育成向けの温度ではなく、あくまで生かしておくだけ。現状維持を目的とした温度と言えるでしょう。
ということは…察しの良い方は既に気づいているかもしれませんね。
まとめ
・高水温は成魚以降には向いていない
・低水温は稚~若魚時には向いていない
つまり若魚までは高水温、成魚からピークに掛けては低水温へとシフトしていく飼育が一番なのではないでしょうか。
具体的な例を挙げるとコンテストを目的としてみましょう。
若魚までは個体のサイズを大きくする為に大量給餌が必要なので水温を高めに保ち飼育します。
半年後ようやくコンテスト用の魚が完成しました。しかしコンテストまでは後1ヶ月あります。
そこで、魚を綺麗なピークの状態で保っておく為に低水温での管理へと切り替えます。
勿論1日で急に大きくなるわけではありませんから、例えば2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月を目処に選別を重ねながら徐々に水温を下げていくといった方法が理想でしょう。
現在、我が家の水槽は稚魚が天井に近い最上段、若魚になったら一段下、成魚になったら更に一段下、とだんだん降下していくような配置をとっています。
何故、このような配置になっているのかは説明するまでもないでしょうが、熱気が上に篭り冷気は下に滞留するからです。
月齢によって温度帯を変えるのはコンテストが目的となっているからです。
つまるところグッピーには何度がベスト!と決めてしまうのではなく、目的や月齢に合わせた"適温"を取っていく方が理想なのではないかと私は思っています。
上記では私の例としてコンテストを上げましたが、他にも様々な目的の人がいます。
例えば業者であれば早く出荷する為に高水温で育てた方が生産性が良いでしょう。
種親も頻繁に産ませたいが為に、わざわざ低水温で維持するといったことはしないはずです。
逆に一般的な飼育者さんであれば、鑑賞が目的ですし育成に力をいれることはあまりないでしょう。
となると、バランスの取れた中水温での飼育がベストになってきます。
ここまで中間の24〜26度を適温と書かず、中水温と表現したのはつまりそういうことです。
"適温"は育てる意味や魚の月齢によって変わってくる。これが今の私の理論です。