グッピーの稚魚が罹るハリ病の原因と治療法
グッピーの繁殖に挑戦する上で、稚魚を得ることは難しいことではありません。
しかし、産まれたばかりの稚魚が体調を崩してしまう事があります。
体調を崩したグッピーの稚魚に起こる症状は、尾びれの先が針のように細くなってしまう症状からハリ病と呼ばれています。
これまでグッピーの繁殖に挑戦する多くの飼育者を苦しめてきた、非常に厄介な症状です。
本記事ではハリ病の症状や原因、予防法、治療法について解説していきます。
ハリ病とは?
ハリ病を発症したグッピーはヒレが濁り、尾びれをハリのように尖らせて力なく泳ぎます。
この際、背びれや尻びれもたたみがちになります。
ハリ病と聞くとまるで病気に思えますが、正確にはハリ病自体は病気ではありません。
尾びれがハリのように尖ってしまうのは、体調を崩した稚魚の防御反応による症状です。
成魚のグッピーも体調を崩したら同じように尾びれをたたみます。
このことから、ハリ病とは尾びれをたたむ症状が、稚魚で引きこされたものと考えることが出来ます。
グッピーが尾びれをたたむ・閉じる症状はこちらで解説しています。
ハリ病に感染するのはいつまで?
尾びれが先細りする症状をハリ病とするのであれば、ハリ病発症のリスクは生後およそ半月~一か月程度までです。
ただし先ほど説明したように、ハリ病は体調を崩した稚魚の防御反応によるものです。
生後一か月以降のグッピーはハリ病には罹らないものの、代わりに尾びれをたたむという症状が起こります。
ハリ病に感染する原因
健康なグッピーの稚魚がハリ病に罹る事は滅多にありません。
しかし、もし産まれた稚魚がハリ病を発症してしまったら感染理由を特定し、再発を防止していく必要があります。
ここではグッピーの稚魚がハリ病に感染する原因について解説していきます。
細菌感染症によるもの
一般的にハリ病を発症する原因の殆どは、細菌感染症によるものです。
これは成魚のグッピーが体調を崩す原因にも全く同じことが言えます。
通常、病気の蔓延している水槽などに入れない限りは、産まれたばかりの健康な稚魚が細菌感染症に罹ることはまずありません。
では何故、稚魚が細菌感染症に罹ってしまうのかというと、それは母親からの垂直感染です。
グッピーは卵胎生の為、孵化して暫くは稚魚の状態で母体にいます。
細菌感染症に罹っているグッピーは体内環境も悪くなっており、お腹の子供に垂直感染していると考えられます。
そんな理由から、体調を崩したメスから産まれてくる稚魚は、非常に高い確率でハリ病を発症します。
もし産まれてきた稚魚が全てハリ病を発症した場合は、細菌感染症が原因である可能性が高いです。
系統の虚弱化
近親交配が進んだ系統では、虚弱化した稚魚が多々産まれてきます。
虚弱化した稚魚は病気への抵抗力が弱い為、簡単に体調を崩しハリ病を発症します。
ハリ病の原因が系統の虚弱化による場合、産まれてきた稚魚の全てがハリ病になるわけではありません。
このケースでは成長障害などを抱えた体質の弱い個体のみがハリ病を発症するため、ごく一部の稚魚だけがハリ病になる場合は虚弱によるものだと考えられます。
水質悪化
グッピーの稚魚がハリ病になる原因としてよく水質の悪化があげられます。
しかし、実際のところは水質悪化が直接の原因でハリ病になることは殆どありません。
グッピーは稚魚といえど水質の悪化には非常に強い魚です。
グッピーのブリードをしている方はご存じかと思いますが、健康な稚魚は相当汚れた環境でもハリ病になることはありません。
成魚のグッピーが飼育できる水質であれば、基本的には稚魚も大丈夫です。
ただし、水質悪化が直接的な原因でなくとも、間接的な原因になることはありますので、最低限の水質維持はするようにしましょう。
栄養不足
こちらもハリ病の原因としてよく挙げられるものです。
確かに慢性的に栄養不足が続いた場合、ハリ病を引き起こすことはあります。
しかし、水槽内には微小なプランクトンなどが存在しますし、コケや人工飼料のカスなど稚魚は何かしら口にしていたりするものです。
一般的な水槽下では稚魚がハリ病を引き起こすほど飢えてしまうことは滅多にありません。
また、ブラインシュリンプや稚魚用の人工飼料などの給餌をしていれば、栄養不足でハリ病になることは絶対にないといっても良いほどです。
成魚と混泳している場合は、稚魚がエサを食べれているか確認するようにしましょう。
ハリ病の症状
ハリ病に罹る原因の大半は細菌感染症によるものと説明しました。
次にハリ病を発症した稚魚の症状について解説していきます。
初期症状
初期症状では尾開きがほぼ平行になり、先が少し尖ったような形になります。
この段階で処置が出来れば簡単に治すことが出来るのですが、ハリ病でなくとも水換えなどのショックなどで一時的に尾びれを狭めることがあります。
まだ見極めが難しい段階ではありますが、母親が体調を崩していたり、何らかの心当たりがあるのであれば治療に移っても良いかと思います。
中期症状
中期症状では完全に尾びれが先細りし、ハリ病と断定することが出来ます。
横から見た鉛筆のような細い三角形を想像していただけると分かりやすいかと思います。
ハリ病は初期症状からの進行が早く、一日程度で中期症状になる事が多いです。
つまり、それだけ早期治療が大事だということです。
ハリ病であることが確定したら、一刻も早い治療をおすすめします。
末期症状
ハリ病は中期症状からは見た目に進行がありませんが、癒着が酷くなると更に尾びれが先細りすることもあります。
稚魚は体力が少ないこともあり、死に至るまでの期間も短いです。
放置しすぎて治療に耐えられる体力もなくなってしまうと、残念ながら手遅れになります。
ハリ病の治療法
ハリ病は死に至る事が多い症状ですが、早期発見・早期治療が出来れば回復させることもできます。
最後にハリ病の治療法について解説していきます。
塩水浴
稚魚の尾びれが完全に閉じる前であれば、塩水浴のみで治療することが可能です。
塩水浴の際には0.5%の塩浴を行いましょう。
塩水浴には浸透圧調整にかかる負担を軽減する効果がありますが、早期であれば塩水浴のみで完治させることができます。
また、ハリ病が進行して0.5%の塩水浴で治らない場合、1%の濃度で塩水浴すると効果のある場合があります。
高濃度の塩水浴は稚魚に負荷がかかる為、塩が少しずつ溶け出すようにしてください。
また、進行の進んだハリ病は回復の可能性が低く、ここまでの塩水浴で治せなかった時点で、体力のない稚魚にはかなり厳しい状況です。
薬浴
薬浴は魚体に負担をかける為、体力の少ない稚魚は短期間しか耐えられません。
つまり、稚魚への薬浴はそれなりのリスクを孕んでいます。
場合によっては、薬浴を行った事が稚魚への決定打となる可能性を理解しておいてください。
ただし、適切に使えれば回復の可能性も高く、塩水浴が効かないケースでも治せる可能性があります。
ハリ病に対して薬浴を行う場合は細菌感染症に効く薬を使いましょう。
理由は先述の通り、細菌感染症がハリ病の原因となっている事が多いからです。
市販の魚病薬ではやはり、グリーンfゴールド顆粒が一番おすすめです。
基本的にはきっちり規定量の薬浴を行ってください。
まとめ
今回は稚魚のハリ病について解説しました。
グッピーの飼育に慣れてくると、親のコンディションも良い状態を保てるようになり、ハリ病の発生はなくなります。
しかし、ショップから購入したグッピーなどはコンディションが悪いことも多く、完全にリスクを0にすることは不可能なのが現状です。
そんな理由から、特に繁殖に挑戦したばかりのビギナーさんは気を付けなければなりません。
また、最初の繫殖で躓かない為には、健康なグッピーを購入することが非常に大事です。
実店舗で購入する際はヒレがピンと張っていたり、俊敏な個体を選ぶようにしましょう。
特にグッピーの専門店などは問屋を介入しない為、クオリティの高い健康なグッピーを入手するには最適です。
私も直販のショップを運営しておりますので、興味のある方は覗いてみてください。